EDN101 /2017/木造2階建/多世帯住宅

©️コムラマイ

横浜市郊外にある、約40年の歳月を経て育った豊かな樹木に覆われた街並みをもつ、ニュータウンに建つ2世帯住宅である。南側で遊歩道、北側で道路に面する敷地に対して、風の流れができるようにふたつの道路を縦断する「通り土間」をもつ建築を計画した。ふたつの棟が連なる長屋形式とし、通り土間を2世帯で共有して利用できるような配置を導き出した。通り土間は、共有された中央の木フレームにより周囲との領域を区切っており、まるで透明な壁でもあるかのように囲われた空間としての安心感を得ながら、街並みに対しても柔らかく開かれている。さらにこの木フレームの上部や側面部分にはテントやワイヤー、ハンモックを張ることもできるため、住まい手の想像力を掻き立て、さまざまな空間の使い勝手を見つけていける自由な場にもなっている。雨は降るが土間としての役割を果たしている。また建主は、昼夜、陰影を感じる空間を求めていた。室内の光を取り入れる開口部は、南北縦断する通り土間側につくることで季節、時間によって変化する光を取り入れ、床、壁、天井のすべての仕上げは、光の反射が少ないフレキシブルボードとすることで、土間からの光がそれぞれの部屋で異なる綺麗な陰影をつくり出している。共有の通り土間をもつ2棟の1階部分は、土間に対して1間分開くことできる大きな開口部があり、土間と居間を繋げて風、音、活動までを心地よく感じることができると共に、街に対して開きすぎない開放感をつくり出したいと考えた。そして街に開かれた通り土間を介し、住まい手達が適度な緊張感をもって、2世帯間のプライバシーにも配慮し合う、心地よい関係を生み出している。